私が去年一緒に暮らし始めたメインクーンの仔猫、蒼は、虹の橋へ旅立ってしまいました。
忘れたくないけど思い出すと悲しくなるし、それもきっと時間が癒やしてくれるのだろうけど、今日こそ一緒に暮らしたブルーの可愛い仔猫について書き残しておきます。
文脈と関係なく元気な頃の写真をたくさん貼っていくよ。
猫を飼おうと決めたのは那須に引っ越すとき。
6月に引き取って一緒に暮らし始めました。
布団の隅っこで丸まって眠り、朝になると枕元でゴロゴロ言って私のことを起こす。手を近づけると指を甘噛みする、仕事をしている間は日当たりの良いところで寝転んでいて、派手に暴れまわったりしない、そんな猫でした。
仔猫にしてはかなり大人しく、家中を駆け巡ったり、柱を引っ掻いたりするようなことはほとんどありませんでした。
9月を過ぎ、生後半年を経ったとはいえメインクーンにしては小柄で、夏を過ぎてからはオモチャにもあまり興味を示さなくなり、ずいぶん大人しい猫なのだなと思った記憶があるのですが、いま思い返すと具合が悪かったのかも知れません。
様子がおかしいことに気付いたのは11月の初旬。歩いていても寝ていても、力が無くぐったりしているようでした。それでも来客の友人と遊んだりしていたので、少し経過を見ようと考えました。
数日のうちに容態が悪化して歩くのもよろめくようになり、獣医さんを探して診てもらいました。腹水が溜まっており、確定的ではないが良くない病気かもしれない、そう言われた気がします。
友人からのアドバイスで別の獣医さんにもかかりました1。レントゲン検査、血液検査、腹水の検査を行い、点滴のため入院もさせました。
今の状態が悪いだけできっと良くなるだろうと考えていましたが、獣医さんによると 猫伝染性腹膜炎 (通称FIP) という病気の疑いがあると聞かされました。FIPの予後は非常に悪く、死亡率はほぼ100%の恐ろしい病気であるということ。
獣医さんも飼われていた猫をFIPで亡くしたことがあるとのことで、低血糖にフラフラしている蒼を目の前にして、病室で涙をこらえきれませんでした。
入院中、どうにかならないのか調べたところ、FIPの治療薬はゼロではなく、MUTIANという非常に高価な未承認薬がありました。だいたい3ヶ月ほど毎日投薬が必要で、その間の治療費は120万円ほどに達するそうです。一時期話題になった猫スープラもこうした薬を使うためのものだと思います。
ブリーダーさんにも相談しました。FIPは老猫、仔猫にまれに発症する病気で、死亡率が高いとのことでした。
このとき、ブリーダーさんに「主治医は効果が見込めるか分からないMUTIANの投与に反対である」「蒼くんのことは諦めてください」とハッキリ言われました。私は我にかえり、なにかにすがる思いで壺を買う人の気持ちがちょっと分かった気がします。認められていない薬を投与してすがるのは非科学的だし、壺を買うのと変わらないなと。
翌日、入院している蒼を引き取りに行き、何もしないことを決め、もうすぐ死んでしまうであろう仔猫との数日を過ごすことになります。
天気のいい朝、パーカーの懐に蒼を入れて散歩に出かけました。近所のおばあちゃんに「あれまあ、どうしたの」と訊かれ、「もうすぐ死んじゃうから一緒に散歩してるんです」と答えました。
蒼は楽しくなかったのか、途中で嫌がって声をあげたのであまり長い時間外に居たわけではありません。一緒にキャンプに行きたいなと思っていた飼い主のエゴですね。
食も細くなっていたので、少しでも食べてくれるようにとウェットフードやちゅ〜るを与えますが、水も食べ物も摂らないようになっていきました。
土曜日の夜に蒼はほとんど動けなくなりました。
いつもと同じように布団の隅っこに寝かせ、私が寝てしまったらもう生きて会えない不安でほとんど寝られませんでした。いつの間にか寝てしまい、目が覚めたときに呼吸してるのが見えた時は安心したものです。
日曜日はほぼ寝たきりでしたが、トイレは自分でどうにかしたいようで、途中で倒れながらでも向かっていました。2回ほど粗相してしまい、嫌そうな声で鳴いていたのを覚えています。それくらいいつだってお世話してあげるのに。
買い出しに行っているとき、お風呂に入っているとき、トイレに行っているとき…ちょっと目を離した隙に二度と生きて会えなくなってしまうのではと思い、なるべく離れずに過ごしました。夜になってからは膝に乗せて抱っこして撫でながらテレビを見ていました。
そろそろ寝る支度でもしようかと思った頃、蒼はどこを見ているのか分からない顔で天を掻き、それから少し経って、苦しそうににゃーっと鳴きながら前足を伸ばすようにしてブルブルッと震えたあとに力が抜けていきました。
具合が悪くなり、獣医さんに診てもらってからたったの6日、来るべきときが来たのだなと察しました。ブルーのかわいい仔猫は、私の膝の上に乗ったまま虹の橋へ行ってしまったのでした。
持ち上げて抱きしめた仔猫の亡骸は柔らかかったです。首のすわっていない人間の子供のようでした。
毛並みはふわふわで、まだ温かいですが、話しかけてももう返事はありません。
用意しておいたダンボールにバスタオルとペットシーツを敷いて、その上にそっと寝かして、まだ仔猫なのに早すぎるし、一人にしないでくれ、一緒にいてくれてありがとうと大人気なく声をあげて泣きました。
翌朝はペットの火葬場の手配、お花とドライアイスの調達に出かけました。忙しいわけではないのですが気持ちが落ち着きませんでしたね。数日後に火葬を終えて、今は小さな骨壷に入ったままテレビの脇にいます。
忘れもしない11月21日の出来事はこれでおしまい。ほんの数ヶ月だけど一緒にいられてよかった。
今日、3月5日、蒼の誕生日でした。
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最初にかかった獣医さんは畜産が多く、ペットは不得意なところもあるそう。でもとても良い先生です。↩