Go for it!

クルマやバイクに乗ったり猫を撫でたり銃を担いで鹿を追いかけ回したりしています。

初めて獲った牝鹿のこと

もう3ヶ月も前の話になってしまったけど、初めて獲った牝鹿の話を書き記しておきましょう。

私の狩猟歴はこのときで1年。罠にかかった獲物は何度か撃たせてもらったことがあります。しかし、フィールドで獲物を見かけることも発砲したこともあるものの、残念ながらこれまでに一度も獲ることは出来ませんでした。

猟期最後の日、なんとか1年目で獲物を仕留めたい。欲があると獲物は獲れない気もしましたが自分の気持ちに嘘は付けません。しかしこの日は結局獲れず、猟果ゼロのまま最初の1年を終えました。

諸先輩方の「大物猟は何年も獲物に会えないことが普通だよ」、「初めて獲物が獲れたのは7年目だったからさ」という慰めの言葉(?)をもらいつつも、やはり正直なところ少し落胆していました。


それから一ヶ月、3月下旬から有害鳥獣駆除が始まります。

持って行ったのはいつものモスバーグ500。新しい猟銃も届いており使いたい気持ちはやまやまでしたが、一度も獲物を仕留めないまま切り替えるのは心残りです。

タツ場に入って犬をかけるとしばらくして獲物が動き出したと連絡が入ります。

「そっちに行ったぞ!気ィ付けろ!」

日差しは暖かいものの葉が落ちてきれいになったフィールドを、親子2頭の鹿が駆け上がって来ました。大きいのが前、小さいのが後ろ。

ソっと銃を構えて鹿に狙いを定めて追いかけると、先頭の1頭の動きが止まりこちらを見ています。しっかり頬付けして狙いを定めると…あれ?クレー射撃用のセットアップで持ってきてしまい頬付けが上手く出来ず目線が安定しません*1

クレー射撃セットアップのモスバーグ500

あちこちケラれながらスコープを覗くと頭をしっかりと捉えられる距離でこちらをジッと見ています。人間が動かないので「何か居るので観察しよう」としているのでしょう。

こちらは上手く頬付けが出来ずにモゾモゾとスコープを覗き込んでいるわけですが、時間を書けて眼前の獲物を逃がすわけにはいきません。頭を狙うのは諦めて首を狙ってトリガーを引くと——スコープの中で仰向けに倒れ込む鹿が見えました。

初めて獲物を仕留めたという行為に圧倒されて、小走りに逃げてゆくもう1頭の鹿はただ眺めるだけでした。

落ち葉が入るのを嫌ってチャンバーは閉じています。脱包よし。

倒した獲物はとても大きな牝鹿で、弾は狙い通りに首の左側から入り右へ抜けたようです。至近距離から放たれた12ゲージのサボットスラッグは、十分なエネルギーを与えて文字通り獲物を撃ち倒し、口をパクパクさせて今にも命の火が尽きそうです。

周りの狩猟者に初めて獲物を獲ったときのことを訊くと、みんな必ず覚えているそうです。しかし、その時の感情は、喜び、悲しみ、怒りと様々で、自分はどうなるのだろう?とずっと考えていました。

運搬のために牝鹿を解体しているとお腹の辺りから真っ白の液体がにじみ出て、お乳が出てきたので妊娠していたのかも知れません*2。なぜか怖くなって子宮のあたりは開けられませんでした。

血と内蔵が抜けて息をしなくなった鹿を前にして、ごめんね、ありがとう、ちゃんと猟師になれました、と安堵の気持ちになりました。

*1:クレー射撃ではリブ銃身を使うのでストックの頬の位置を低くします。猟ではスコープを使うため目線が高く、ストック上端を上げて対応します

*2:ニホンジカの妊娠期間は220日で5〜7月に出産